指定管理者の業務が道路特定財源絡みで影響を受け,違法解雇が発生

4月11日の読売新聞高知版の記事から

国政で混乱「申し訳ない」−暫定税率失効、違法解雇
道路特定財源暫定税率が失効した影響で、南国市の県埋蔵文化財センターが発掘調査を取りやめ、作業員21人を違法に解雇していた問題が明らかになった10日、同センターの担当者らは「あまりに突然だった」と、国政混乱の余波に困惑しながら、「作業員には申し訳ないことをした」と陳謝の言葉を述べた。改めて21人に電話で事情を説明しているという。
 発掘調査は、県教委が国土交通省土佐国道事務所との契約で行い、県教委が同センターの指定管理者となっている県文化財団に調査を委託している。
 同センターは今月1日に県教委と業務委託契約を結んでいるが、県教委と土佐国道事務所は例年、4月1日付の契約書を同月後半に交わすため、今年は契約していなかった。県教委は、同事務所の要請に応じて3月27日に同事務所に事業計画書を提出しており、「契約できなくなると言ってもらっていれば」と困惑している。
 一方、発注側の土佐国道事務所は、1日に支出可能な予算額が判明してから四国地方整備局と協議し、道路維持管理など必要最小限な支出に限るとの方針を決めた。3月28日には、県教委から契約ができるのかどうかを問われて「どうなるかわからない」と答えていたといい、同事務所は「過去にない事例で想定できなかった。道路特定財源がどうなるか全くわからなかった」としている。
 労働基準法では、解雇の場合、事前の予告か解雇予告手当を支給することになっているが、天災などやむを得ない理由で事業継続が不可能となった場合は解雇予告が除外されることになっており、同センターは高知労働基準監督署に、除外の申請を行っている。これが認められず、手当を支払う必要が出た場合は、県教委が同事務所などと負担について協議する方針。

なかなか,良く分からない状況です。良く分からないながら,推測を交えながら考えます。
県教委が国交省から発掘調査を請け負う契約を従前から行ってきた。
 県教委はその発掘調査を埋蔵文化財センターの事業として,または埋蔵文化財センターに都度委託して実施してきた。その埋蔵文化財センターの業務は指定管理者が行っている。という前提ですね。
ところが,2008年度の県教委と国交省の契約が行われない状態となった。このため,埋蔵文化財センターの業務量が減少してしまったことになります。
問題はいくつかあります。
一つは,県と指定管理者の間の2008年度の契約はどのようになっていたのか。
 指定管理として一括で委託する分については,書面上はまだ契約が結ばれていなかったことは想定されますが,実態としては2008年度の委託費については合意が交わされていたはずです。
 もちろん,一括委託とは別に,特定の調査業務について個別に契約をすることも考えられますが,それにしても,口頭では合意が交わされていたと考えられます。
 指定管理者にとってみれば,それが一方的に反故にされたということです。
 そのため,反故にされたことにより指定管理者が被った損害については,厳密な算定が必要ですが,県から賠償を行わなければならないでしょう。
二つ目は,埋文センターが,解雇予告手当除外の申請を行っていることです。
 被雇用者には何ら責めのない解雇ですし,解雇予告手当を支払っても県文化財団が倒産するわけではありません(少なくても損害は県に請求できます)から,解雇予告手当の除外の申請すら,そもそも正当な理由がないのではと考えます。
三つ目は文化財保護上の問題です。
 3月まで作業員を雇用してきたわけですから,当該発掘調査は,すでに着手済みであったと考えられます。国交省国道事務所で予算がカットされたという事情は分かりますが,すでに掘り起こしつつある発掘調査が途中で中止に追い込まれてしまったと考えるのが普通でしょう。発掘現場は,作業途中で風雨にさらされてしまいます。
 発掘現場の遺跡の学術的評価は当然,まだ行われていないわけですが,中断している間にも,遺跡の損壊が進んでしまうことが考えられます。道路工事が今後,予定どおり継続されるのかどうかはわかりません。ただ,実行途中の埋文調査がストップしてしまうことは,文化財保護の観点から見れば,悪く言えば,事業者(国交省)による意図的な遺跡破壊です。
国交省も,県も,文化財団も,そろいそろっておかしなことをしているようです。

5月2日追記 とりあえずの決着

4月17日の高知新聞の記事から

作業員違法解雇で300万円支払い 県埋文センター
埋蔵文化財センター(南国市篠原)が、道路特定財源暫定税率失効で発掘調査ができなくなり、作業員二十一人を違法に解雇していた問題で、高知労働基準監督署は十七日までに、今回のケースが労働基準法違反に当たり、解雇予告の除外には該当しないと決定した。これにより、二十一人に解雇予告手当約三百万円を支払う法的義務が発生。同センターは「早急に手当を支払う」としている。

当然の判断だろうと思います。
同じく4月17日の産経新聞の記事から

解雇の作業員に300万、暫定税率期限切れで
道路特定財源暫定税率期限切れの影響で、高知県文化財埋蔵文化財センターが、国道整備に伴う遺跡調査の作業員21人を解雇した問題で、センターは、全員に解雇予告手当として計約300万円を支払うことを決めた。
 労働基準法は、少なくとも解雇の30日前に予告しなければならないと規定。センターは「解雇は不可抗力だった」として、高知労働基準監督署に手当支払いの免除を求めていたが、認められなかった。計約300万円は県文化財団が負担する。
 21人は今月1日、センターに雇用されたが、国土交通省土佐国道事務所から「暫定税率失効で契約できなくなった」と県教育委員会に連絡があり、2日に解雇された。

あとは,非営利・非行政組織である財団法人高知県文化財団が,自らの負担した金額について,行政にどう請求するかですね。