地上波デジタルと共同受信設備の改修費用について

ビル建設や鉄道・高速の高架等の建設のため,テレビの電波障害が起こる場合,ビルや高架の所有者が費用を負担し,共聴設備(共同受信設備)を設置・管理するようになっています。
某所で,話題となったので,今回の地上波デジタル化によってどうなるのか,ざっと調べてみました。
まず,実例として,某新幹線高架沿いの共聴組合へのJR東日本からの通知

                         平成 18年 3月 9日

○○○○地区 新幹線テレビジョン共同受信施設組合
    組合長 ******* 殿


                       東日本旅客鉄道株式会社
  地上波デジタル放送開始に伴う新幹線テレビ受信障害対策について


拝啓時下ますますご清栄の事とお喜び申し上げます。平素は新幹線テレビ受信障害対策の維持管理業務にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 現在の新幹線テレビ受信障害対策施設が対象としている地上波アナログテレビ放送(以下、「アナログ放送」という。)は、国の施策によりデジタル化が進められており、平成23年7月24日を以って地上波デジタルテレビ放送(以下、「デジタル放送」という。)へ完全移行し放送が終了する予定です。
 弊社では、現在のアナログ放送の受信障害につきましては、アナログ放送が終了するまで対応致しますが、今後は下記の対応とさせていただく予定でおりますのでご連絡申し上げます。
                           敬具


            記
1 現在の新幹線テレビ受信障害対策について
デジタル放送はアナログ放送と電波方式等が異なり、受信障害の解消が見込まれます。そのため、現在弊社が行っている新幹線テレビ受信障害対策は、アナログ放送終了をもって終了し、弊社と締結している協定につきましては終了とさせていただきます。


2 デジタル放送用のテレビ・アンテナ等の受信設備について
デジタル放送を受信するためには、「デジタル放送対応のテレビやUHFアンテナ等」の受信設備が必要となりますが、これらの費用につきましては、一般の受信者と同様に皆様方のご負担において対応をお願い致します。


3 第2項の例外
デジタル放送に対する受信障害調査の結果、弊社と協定を締結している対象者の方で、弊社の新幹線施設や列車走行の影響により受信障害が発生する場合は対策を講じる考えです。


※デジタル放送受信障害調査について
デジタル放送開始後も、一部のエリアでは受信障害が発生する可能性がありますので、弊社独自の調査を平成18年2月から、デジタル放送(本放送)開始エリアについて順次実施致します。(試験放送期間中は、放送電波が弱い場合があるため調査は行いません。)
 なお、デジタル放送の受信障害調査につきましては、調査の範囲が広域であることから相当の時間を要することが予測されます。


4 対応のご提示
具体的な対応については、デジタル放送受信障害調査が終了次第、ご提示させていただきます。
 なお、対応窓口については、4月以降設置する予定でおります。連絡先等につきましては、準備出来次第ご連絡いたしますので、よろしくご理解のほどお願い致します。


                           以上

上記文書の第3項に出ているように,デジタル化しても,場合によっては周波数が高くなったことで一層,受信障害が残り,また発生することがあり得る。その場合にはJR東日本は「対策を講じる考え」とのことですね。


何かしら,ガイドライン的なものがあるのかなと思って探していましたら,上記文書より後の日付ですが,次のようなものがありました。


都市受信障害対策共同受信施設の地上デジタル放送対応に係る周知の促進について(通達)総情域第151号(平成18年11月27日) 別紙

都市受信障害対策共同受信施設の地上デジタル放送対応に係る考え方
高層建築物等による受信障害(以下「受信障害」という。)への対策として設置された共同受信施設(以下「対策施設」という。)については、平成15年12月以降、地上デジタルテレビジョン放送(以下「デジタル放送」という。)の全国展開が進展していること、平成23年7月24日までに地上アナログテレビジョン放送(以下「アナログ放送」という。)が停波され、デジタル放送へ完全に移行する予定であることから、施設改修等のデジタル放送対応が必要とされているところである。
これに係る対処については、当事者相互の協議による自治的処理が原則であるものの、その際に参考となる実例・学説・判例の蓄積も途上であり、社会慣行として定着するには時間を要する状況にある。
しかしながら、アナログ放送の停波までに対策施設のデジタル放送対応に係る適切な措置を講じるための時間的制約を踏まえ、デジタル放送への円滑な移行とその促進を図る観点から、対策施設のデジタル放送対応のための協議の際の参考とすべく、費用負担等の考え方を示すものである。
1 基本的考え方
(1)デジタル放送は、受信障害に強い伝送方式を採用しているため、アナログ放送に比べると受信障害の改善が見込まれており、現に対策施設によりアナログ放送を受信している世帯(以下「受信者」という。)のうち、一部の世帯は個別アンテナによる直接受信が可能となる。
従って、デジタル放送への移行後、そのような世帯に対してはアナログ放送における受信障害の原因となった高層建築物等の所有者(以下「所有者」という。)が設置した対策施設による受信障害対策の必要性は無くなるものと考えられる。
(2)一方、デジタル放送においても引き続き受信障害が解消しない世帯に対しては、
○ デジタル放送はアナログ放送から置き換わる(代替する)ものであり、地上波放送における受信障害に変わりがないこと
○ アナログ放送における受信障害の原因となった高層建築物等が、デジタル放送においても受信障害の要因の全部又は一部であると考えられること
○ 「高層建築物による受信障害解消についての指導要領について(通達)」(昭和51年3月6日郵放企第8号)において、対策施設のうち「共同アンテナから各戸の保安器までの設備及びこれらに附帯する設備」については「受信障害発生の原因となっている建築物の建築主の責任と負担で維持管理を行うことが適当である」としていること
から、デジタル放送への移行後も引き続き、所有者によって、対策施設の適切な維持管理等の措置が講じられる必要がある。
(3)従って、受信者が、受信障害対策として引き続き対策施設によってデジタル放送を受信せざるを得ない場合、当該対策施設のデジタル放送対応に係る改修を行わなければアナログ放送から置き換わるデジタル放送への移行後には地上波放送の受信障害対策施設としてテレビジョン放送を受信する機能が失われることとなることから、対策施設のデジタル放送対応に係る改修方法や費用負担等については、当該対策施設の維持管理責任を有している所有者と受信者とを当事者とする協議によって決定されることが基本となるものである。
2 費用負担の考え方
対策施設のデジタル放送対応に係る改修に要する費用負担については、当事者間協議を通じて合理的に決定されることが望ましく、対策施設の維持管理責任やデジタル放送を個別アンテナにより直接受信する世帯との公平性の確保等を踏まえ、当事者双方が応分の負担をすることが妥当と考えられる。
その際の具体的な費用負担の考え方の一例としては、
○ 対策施設のデジタル放送対応に係る改修に要する経費のうち、当該対策施設により受信せざるを得ないがために必要となる部分は、その維持管理責任を有している所有者が負担すること、
○ また、受信設備の設置は一般的に受信者自ら行うことが原則であり、対策施設での受信によることでそれらに係る経費が不要になるものではないことから、個別アンテナにより直接受信する世帯との公平性を考慮し、受信者は、デジタル放送の受信に通常必要とされる経費に相当する額を負担すること、
○ 従って、デジタル放送を個別アンテナにより直接受信する世帯が通常必要とされる、UHFアンテナの設置費用等の経費に相当する額を受信者が負担し、それを超える額を所有者が負担すること
が想定される。
なお、ケーブルテレビへの加入等、対策施設の改修以外の方法でデジタル放送を受信しようとする場合も、前記の考え方に沿って、当事者双方が応分の負担をすることが想定される。
3 その他
デジタル放送においては受信障害の改善が見込まれることから、デジタル放送への移行後には受信障害が解消される範囲の対策施設の撤去・縮小等により、その維持管理に係る経費を軽減することが可能となる。
このためには、デジタル放送において受信障害が解消される範囲を調査することが必要となることから、対策施設の維持管理に係る経費軽減等が見込まれる所有者が、この調査を主体的に実施することが望ましい。

基本的に,デジタル化しても,またはデジタル化したことにより受信障害が発生する場合,受信者の担うべき費用負担は(個別アンテナの設置など)「デジタル放送の受信に通常必要とされる経費に負担する額を負担することが相当ということですね。それを超える額は,障害を発生させた側が負担すると。
どうも,今回のデジタル化に際し,障害を発生させる側が責任を逃れ,ケーブルテレビ設置工事等の初期費用のみ負担し,会費等は受信者負担とさせようとする悪質な例があるようです。
上記通達に沿うならば,UHFアンテナ設置費用等に相当する初期費用のみ受信者が負担し,会費等の経常的な費用は,電波障害を発生させた側が担うことが妥当と思われます。

2008年6月17日追記

デジタル放送への移行完了 のための関係省庁連絡会議の5月23日の配付資料に「地上デジタル放送への移行完了のためのアクションプラン2008 骨子」というものが出ています。特に受信障害対策について,下に引用します。

第2章 公共施設等による受信障害への対応
公共施設等を原因とする受信障害については、受信障害対策共同受信施設(共聴施設)の設置等により対策が講じられており、デジタル放送においても受信障害が継続する場合には当該共聴施設のデジタル化対応が必要である。
 公共施設等により受信障害が生じている場合には、国民のデジタル放送視聴を阻害することのないよう、平成22年12月末までに全ての公共施設等による受信障害へのデジタル化対応が終了することを目標として、共聴施設のデジタル化対応に率先して取り組む。
(1)国の施設等による受信障害への対応【全省庁】
各省庁において、所管の施設(所管の独立行政法人の施設を含む。)による受信障害の現状等を速やかに把握し、本年8月末まで(ただし、所管の独立行政法人については成21年3月末まで)にデジタル化対応に向けた具体的計画を策定することとし、内閣官房において各省庁の計画をとりまとめて公表を行う。その後、各省庁において、当該計画を踏まえ、受信障害範囲の調査、共聴施設による視聴者等への適切な周知説明と対応方法、費用等に係る話し合い等を進め、共聴施設のデジタル化対応を推進する。
 また、各省庁において、毎年度9月末及び3月末時点における同計画の達成状況を確認し、内閣官房が政府全体としての達成状況を取りまとめて公表する。同計画については、各省庁において必要な見直しを行う。
(2)航空機による受信障害への対応【国土交通省防衛省
民間航空機による受信障害の有無について、国土交通省は、その現状を把握し、空港周辺のデジタル放送の中継局が整備された段階において調査を行い、地域住民のデジタル放送の受信障害防止のために必要な措置を講じる。
 自衛隊等の航空機による受信障害の有無について、防衛省は、自衛隊等の飛行場周辺のデジタル放送の中継局が整備された段階において調査を行い、地域住民のデジタル放送の受信障害防止のために必要な措置を講じる。
(3)地方公共団体の施設等による受信障害への対応【総務省・関係省庁】
総務省及び関係省庁において、各地方公共団体に対して、地方公共団体の施設(住宅供給公社及び都市整備公社の施設を含む。)による受信障害の現状等を速やかに把握するとともにデジタル化対応に向けた具体的計画を策定し、その後、当該計画を踏まえ、受信障害範囲の調査、共聴施設による視聴者等への適切な周知説明と対応方法、費用等に係る話し合い等を進め、共聴施設のデジタル化対応を推進するよう要請する。
 併せて、各地方公共団体において毎年度末(ただし平成22年度は9月末及び3月末)時点における同計画の達成状況を確認し公表することを要請する。
(4)公益事業者による受信障害への対応【総務省・関係省庁】
総務省は、関係省庁の協力を得て、所管の電力、鉄道等大規模な施設を用いて公益性の高い事業を行う者(以下「公益事業者」という。)に対して、そうした公益事業固有の施設に関する共聴施設や受信障害の現状等の把握、適切な周知広報等、デジタル化に向けた視聴者への早期の対応を働きかけ、定期的に対応の進捗状況を確認し、他の受信障害対策共聴施設の状況と併せて公表等を行う。
 また、総務省は、情報通信審議会における受信障害対策を含むデジタル放送への完全移行に向けた様々な課題についての提言を踏まえ、関係省庁とも連携しつつ、必要となる施策を検討し、本年末までに結論を得る。


第7章 放送基盤の整備
(3)受信障害対策共聴施設の改修促進【総務省・関係省庁】
総務省は、公益事業者等に対して、受信障害の現状等の把握や視聴者等への適切な周知広報などデジタル化に向けた早期の対応を働きかける。また、総務省は、平成22年度末までに受信障害対策共聴施設の改修等を完了すべく、共聴施設のデジタル化の現状等を本年度末までに把握し、それをもとに計画的な周知広報と進捗状況のフォローアップを図るとともに、複数建物の影響等による複合的な受信障害について、本年末までに課題を整理・類型化し、デジタル化の推進方策を策定する。

ついでに,同じ文書からもう一か所。

第6章 経済弱者等への受信機普及
(2)経済弱者の受信機購入への支援等【総務省厚生労働省
聴覚障害者が利用している「情報受信装置」については、「日常生活用具」として地方公共団体からの給付対象に含まれ得るものであることから、厚生労働省から地方公共団体に対して、現行機種の専用チューナーや新規機種である地上デジタル放送対応型の「情報受信装置」の開発状況の情報提供等を行う。

いずれも,もっと踏み込んだ対応を期待したいところです。このアクションプラン骨子についてはパブリックコメントを実施中(6月23日まで)ですので,多くの意見が寄せられることを期待します。