東京書芸館の「本水晶 黄金の五重の塔」,家系図作成ビジネス

東京書芸館(http://www.rakuten.co.jp/shogeikan/)は,工芸品や模造品について,新聞で大きく広告をうち,販売している会社です。
 この日記でも2006年5月4日の「東京書芸館のブロンズ像」,2006年4月22日の「東京書芸館の戦艦大和の模型」,2004年12月28日の「おかしな商品『幕末維新の志士達』東京書芸館」で触れたことがあります。
というのは,新聞広告のスペースがそれなりに大きく,広告中の文字の分量もある程度あります。だいたい書かれていることは「第一人者」が何らか関係している「優れた」ものということですが,それを検証して追認するのは興味深いことだからです。

今回の商品は「本水晶 黄金の五重の塔」。「甲州水晶貴石細工」の第一人者,伝統工芸士の田中保山氏による傑作とのこと。また,山梨県水晶宝石美術彫刻協会の証明書つき。一点一点手作りのため,頒布数は限定15個。大きさは,高さ29cm,1個346,500円とのことです。

15個全て売れると,売上計5,197,500円。それにしても,全5段の広告を出して,これだけしか売り上げ代金が得られないのであれば,会社なんてやっていけないんじゃないかと心配になります。まあ,存続しているようですから,どこかで利益を出しているんでしょうけれども。

山梨県水晶宝石美術彫刻協会については,googleで検索してみましょう。
 ところが,残念ながら5件しかヒットしません。「伝統工芸士・田中佑幸作の水晶彫刻品/宝船 七福神 386,400円(ライブドアデパート,インテリア通販の檜屋(釜石市中妻町3-14-6))」,「田中佑幸による完全手づくり 伝統工芸士 佑幸作 水晶彫刻品 五重塔 386,400円 京都・東寺にインスパイアされて作られたものとのこと,高さ35cm,大日如来坐像つき(株式会社光芸 相模原市津久井町三ヶ木1018-5)」,それから「田中佑幸 水晶貴石細工 五重塔 309,750円 高さ35cm,大日如来ではなく水晶玉が中に付く(東京書芸館)」と「田中保山による本水晶 黄金の五重の塔 346,500円(東京書芸館)」ぐらいですね。

不思議に思いながら,もう少し調べてみると,山梨県水晶宝石美術彫刻協会の証明書がアップされていました。ここです→http://image.depart.livedoor.com/free/postarcarendar/suisyo4.jpg。よく見ると,「山梨県水晶宝石美術彫刻家協会」となっていますね。しかし,これでgoogleを検索してみるも,やはりヒットしません。

それにしても,この「山梨県水晶宝石美術彫刻家協会」の証明書,代表者欄が「顧問 田中尭保」となっていますね。田中佑幸氏と,田中保山氏のお父さんですね。ここで,この三人を整理してみましょう。

田中尭保(たかやす)氏
 東京書芸館によると「不世出の名匠,勲七等受賞」とのこと。googleで見てみると勲七等青色桐葉のようです。

田中佑幸(ゆうこう)氏
 東京書芸館のページによると「1940年、山梨県甲府市生まれ。若くして、不出世の名匠と称された伝統工芸士の父田中尭保氏 (勲七等)に弟子入り。貴石細工の世界で永年研鑽を重ねる。豊かな天分を発揮し、関東通商産業局長賞、山梨県知事賞等を受賞。 1994年『山梨の名工』に選ばれる。 1995年には、国の伝統工芸士に認定される。」とのこと。
 その他ぐぐった結果:「田中冬至」とも名乗る。1960年から水晶細工の道に入ったという説もあれば,15才で父に師事したという説もあるなど,信憑性は薄い。

田中保山(ほざん)氏
 東京書芸館の新聞広告によると「1951年,山梨県甲府市生まれ,不世出の名匠である父田中尭保(勲七等受勲)に若くして師事し,貴石細工の世界で長年研鑽を重ねる。その精緻かつ優美な技は高い評価を受け,1994年に国の伝統工芸士に認定される。さらに1999年には『やまなしの名工』の称号を授与される。東京通商産業局長賞,山梨県知事賞など多数の受賞歴を誇る,現代の名匠」とのこと。
 その他ぐぐった結果:「田中保晴(保翎)」とも名乗る。(有)工房田中代表。

いままでのところ,わかったのは,山梨県水晶宝石美術彫刻(家)協会(顧問 田中尭保)の証明書を活用しているのは,田中尭保氏の息子,佑幸氏,保山氏ぐらいしかいなさそうということですね。

山梨県水晶宝石美術彫刻家協会」の住所ですが,山梨県甲府市徳行2丁目10番3号と書いてあります。検索してみると,同住所に『田中水晶彫刻所』があります。どうも代表は田中冬至氏のようです。調べるほどに,広がらず,小さくまとまっていくばかりです。山梨県水晶宝石美術彫刻家協会は極めて小さな「組織」なのかもしれません。

2008年2月9日 追記 銀座国文館

2008年2月7日の朝日新聞に「銀座で創業90年『銀座国文館』(中央区銀座2-11-6,TEL:0120-223-227, FAX:03-5679)」という業者の全面広告がありました。
商品は「毛筆巻物 家系図」。 値段が283,500円(一括払い)。
 内容は,「『毛筆巻物,家系図』,江戸和綴じの戸籍集,事実証明書として使用できる行政書士の職印つきの家系図,和製桐箱の4点」とのこと。
東京書芸館の広告と似ているなと思ってよく見たら「銀座国文館」の横に「旧:東京書芸館文化模型事業部」と書いてありました。
そもそも歴史が古い(とされている)東京書芸館自体,数年前に経営主体ががらっと代わり,事業内容が変質しているんですけれども。
社名,またはブランド名を変更して,商売を続けるというのは,よく「悪徳商法マニアックス」で紹介されている悪徳業者のテクニックですけれども,関係があるんでしょうかね。

なお,家系図ビジネスについては「行政書士有志による市民生活サポート協議会」による「家系図作成業務反対アピール」も参考になります。