公共サービスの民間開放と雇用問題

http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20060822#p1でわずかに触れた栗東市の「さきら」についてのニュース
これまで「さきら」を運営していた市文化体育振興事業団の職員協議会(労働組合)が市に求めていた雇用問題について団体交渉を市が拒否したため,組合が県労働委員会に申し立てを行っていた。
これに対して,県労働委員会は「市は、事業団役員の構成に対する支配力を通じて、事業団の意思決定に大きな影響力を及ぼしている」などの理由を挙げ、

市と事業団職員の間に直接的な雇用関係は認められないが、市は事業団に対して、人事面、財政および業務面において大きな影響力を及ぼしている中で、本件指定管理者制度の導入に伴う市の事業団に対する会館の管理委託等の終了は、事業団の存続と事業団職員の雇用に重大な影響を及ぼす問題であり、市は協議会が申し入れた本件雇用問題に関する団交に対して、誠実に対応するべきである。したがって、事業団職員と直接雇用関係がないことを理由に団交を拒否した市の行為は、正当な理由なく団交を拒否したものというべきであって、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

として,職員協議会への謝罪を命じた。
この件は,指定管理者制度の導入に伴う問題だが,今後,国や都道府県レベルでの市場化テスト導入においても,外郭団体や独立行政法人において同様な問題が生じる可能性があり,今後の推移が注目されるところである。
以下は,京都新聞の記事から。

県労働委が栗東市長に謝罪を命令 文化会館さきらの団交拒否で

 栗東市栗東芸術文化会館さきら指定管理者制度導入に伴う雇用問題で、滋賀県労働委員会は1日までに、国松正一市長が元管理団体の市文化体育振興事業団の労働組合との団体交渉を拒否したことは不当労働行為にあたるとして、国松市長に対し、労組に謝罪するよう命じた。
 県労働委は、市と事業団職員との間に直接的な雇用関係は認められないとしながらも「市は事業団に大きな影響力を及ぼしている」とした。
 市は4月に管理者を事業団からビル管理会社に変更した。事業団の職員のほぼ半数が、さきらに勤務しており、指定管理者制度の導入が表面化した昨年11月、労組にあたる職員協議会が雇用確保を求め、国松市長に団交を要請したが、拒否された。同協議会は1月、県労働委に救済を申し立てた。
 国松市長は「主張が認められず残念。今後の対応は命令文を読んで決めたい」とのコメントを出した。
京都新聞) - 11月2日10時57分更新

栗東芸術文化会館さきらについては,指定管理者の公募に応じた市文化体育振興事業団と民間事業者のうち,市の選定委員会が民間事業者を選定した経緯が問題となっている。市が指定管理者制度に選定した「ジェイアール西日本総合ビルサービス」の主な業務は警備、清掃、施設管理であり,継続的な芸術・文化振興事業が担えないのではないかとして,市民の間で問題となり署名運動などが起こっていた。もともと,この問題は,市が作成した仕様書が福祉施設、体育施設等、どのような施設でもあてはまるようなもので、芸術文化施設の特性をまったく考慮しない内容であったことに端を発していたものであろう。
指定管理者の指定についての議案も,市議会において一度継続審議となった。結局,芸術・文化活動をこれまで担ってきた市文化体育振興事業団職員等を指定管理者が再雇用するような形での調整を図り,期日ぎりぎりでとりあえず可決されるなどの経緯があった。

追記 2007年11月2日

栗東芸術文化会館さきらの平成18年度事業運営外部評価報告書が,指定管理者のJR西日本総合ビルサービスから提出されたようです。
詳しくは,Yakupenさんのブログの11月1日のエントリーをご覧ください。
ビルの管理で終始したのか,文化会館として地域の文化価値の創造の拠点となったのか。外部評価報告書がちゃんと市民の評価を反映したものとなったのかはわかりません。本来の,市民による評価をどう受け止めるのかは,ガバナンスを行う,市行政の課題ですね。