学校選択制導入への反対

学校間格差と教育を受ける権利をどう考えるかという,きわめて子どもの人格的成長に関わる問題を無視して,オリックス宮内を看板とする行革屋たちが一方的に進める学校選択制
こどもたちの人権の尊重の立場から部落解放同盟中央本部が学校選択制導入反対を申し入れた。

文部科学大臣 小坂憲次
内閣府規制改革担当大臣 中馬弘毅
規制改革・民間解放推進会議議長 宮内義彦

差別越境を認め,公教育を否定する「学校選択制」導入に反対する

 内閣府の規制改革・民間解放推進会議は,「学校選択制の一律導入」を,本年6月「答申」に盛り込もうとしていると拝聞しています。
 私たちは,就学指定校の変更に関して,「いじめへの対応」など人権に関わる緊急避難の場合や,学校がすぐ近くにあるのに校区編成のために遠くの学校に行かざるを得ないという場合などが原因の学校選択は当然であると考えます。しかし,私たちは全国一律の学校選択制の導入には基本的には反対です。
 規制改革推進会議は,学校選択の権利がなければ「児童生徒・保護者というユーザー本位の教育が実現するはずがなく,特に真にきめ細かい対応が必要とされる学力的に不利な立場にある児童生徒,すなわち「教育弱者」が置き去りにされ,早い段階から学習意欲を喪失してしまうことになりかねない」としていますが,これは決定的な間違いです。
 人権・同和教育の実践は,社会的困難を抱える子どもを置き去りにしているのは,学校選択の権利がないからではないことを示してきました。また,「勉強がわからない」「学校に馴染めない」などの「しんどい」子どもや,その社会的背景を無視・排除しやすい学校の教育内容・教職員(教育行政)の質といった「学校文化」にこそ,その原因があることを明らかにしてきました。
 学校選択制は,当然ながら「学校文化」のもつ差別性を解決するものではありません。それどころか,学校選択制は,1960年代まで公然と存在した差別越境を,教育を受ける権利の名のもとに公然と認め,学校間格差・序列を再び拡大するものであり,歴史の教訓を無視するものです。
 私たちは,差別越境に反対するだけでなく,学校・地域の協働による営みをとおして,すべての子どもの人権確立をめざす学校づくりにとりくんできました。しかし学校選択制は,地域(校区)住民の絆を弱め,地域の教育力を低下させ,「魅力ある(特色ある)学校づくり・地域づくり」の実現を阻むものです。しかも学校選択制の行使が,現実には経済的に余裕のある家庭に限定される傾向にあることは,東京など都市圏において顕著にあらわれており,教育を受ける権利の「特権化」「不平等化」を招くことが危惧されます。
 さらに,学校選択制は,公教育の内容,教育内容の選択にもおよぶ問題です。私たちは教育内容は憲法の理念・原則である主権在民・平和主義・基本的人権の立場から選択・構成されるべきものであると考えます。学校選択制は,こうした公教育の本質を否定する危険な考え方に結びつくものです。
 以上,学校選択制の問題点を指摘し,その一律導入の動きに断固反対の立場を表明するとともに,「学校選択制の一律導入」を前提とした一面的で拙速な議論をおこなうことなく,各地域の実情を踏まえた真に「魅力ある学校づくり・地域づくり」の議論をおこなわれることを強く要望します。
               2006年5月16日
               部落解放同盟中央本部
               執行委員長 組坂繁之