狭山事件再審請求最高裁棄却決定の穴

最高裁判決は,脅迫状筆跡について「同一人が作成する場合であっても,参考書物の有無,又は文書作成時の心理的状態等により,書字・表記・表現の正誤・巧拙の程度等も異なり得るのである」(注釈:筆跡が異なるからといって同一人物が書いたことを否定できない)と述べている。そのうえで,これを「犯人であることの一つの有力な情況証拠である」(注釈:直接的・客観的証拠ではない)としている。
しかしながら,そもそも1974年の東京高裁確定判決では,自白(取り調べ時及び地裁時)を離れ,客観的に存在する証拠の筆頭として,脅迫状を挙げていたのである。
最高裁は,自ら,証拠の客観性を否定したのである。